ATLAS はじめの一歩

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ATLAS Detector

ATLAS測定器は、その構成から大きく分けて、Inner detector, Calorimeters, Muon spectrometerに分けることができます。また、超伝導電磁石である、Solenoid電磁石、barel troid電磁石、end cap troid電磁石、の各電磁石も設置されています。日本グループはこのうちMuon spectrometerのTGC(Thin gap chambers)、Inner detectorsのSCTの開発製作に協力しました。この他Solenoid電磁石も日本の貢献の一つです
Inner detector

< Inner detectorの概要 >

サイズ;半径115cm、全長7m
目 的;衝突によって生じる膨大な事象から、運動量及び飛翔角度を精密に測定する

Inner detectorは、ATLAS測定器の最中心部、超伝導ソレノイド電磁石の内側の衝突点に最も近い位置に設置されている測定装置です。シリコン検出器等から構成されており、粒子の曲線軌道を精密に測定することができます。
このInner detectorは、さらに「Pixel detector」、「Semiconductor tracker(SCT)」、「Transition radiation tracker(TRT)」により構成されています。
日本グループは、Inner detectorのうち、Semiconductor tracker(SCT)の開発及び製作に参加しました。

 
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<Semiconductor tracker>

Inner detectorを構成する一つであるSemiconductor tracker(SCT)は、Pixel detectorとTRTの中間にあり、8層のsilicon microstrip detectorからなっています。
日本グループはこのSCTの中で、シリコンモジュール部分を担当しました。特にリードアウトハイブリッド(下記図中「Hybrid with ASICs」)の設計を担当し、またモジュール総数2,600個のうち、980個を日本が製作しました。
製作されたモジュールの組み込みには精密な組込作業が要求されるため、オクスフォード大学に専用の組立用ロボットを設置して組込作業が行われました。

SCTは、実験の際、運動量、インパクトパラメーター及び飛翔角度の測定、パターン認識などを行います。
そして、このSCTはこれまでの世代のシリコンMicrostrip detectorに比べて、格段に大きな表面積を持っています。
61平方メートルのシリコン測定器を持ち、620万の読み出しチャンネルを持っています。
シリコンモジュールは、下記写真2にあるような1個のモジュールが2層のシリコンで構成されています。2層を微妙にずらすことで、粒子が通過した場所を特定するような仕組みになっています。

 

(写真1) SCT                          (写真2)シリコンモジュール

<参照>
ATLAS Japan HP(1)(2)より

<Pixel detector>
Pixel detectorは、衝突点に最も位置で精密測定できるように50x300ミクロンのシリコン(pixel)でできた薄い層により形成されています。ATLASには、およそ140万のpixelセンサーが衝突点を包むように円筒型及びビームラインに沿ってその前後に層状に配置されています。
Pixel detectorは衝突点に最も近いことから、インパクトパラメーター解析の決定や短寿命粒子(Bハドロンやtau粒子)の発見などの働きをします。それぞれのチップには回路が組み込まれています。構造は、いわゆるデジタルカメラのpixel(画素)と同じような仕組みで、発生した事象を高精度に測定します。
<Transition Radiation Tracker(TRT)>
TRTは、Inner detectorで一番外側に設置されています。シリコン測定装置で広範な部分をカバーするには大変高額の予算が必要となります。そのため別の仕組みの測定装置が必要となります。そこで、直径4mm、長さ144cmのストロー状の筒にガスを充てんし、筒の中央に高電圧をかけたワイヤーを通したTRTを使用することにしました。TRTは、円筒型及びその両側はビームラインと垂直に層状に配置してあります。
Central Solenoid Magnet
超伝導ソレノイド電磁石は、長さ5.3m、重さ5.7tでInner detectorを包み込むように設置されいます。
超伝導ソレノイド電磁石は、2T(テスラ)の磁場(ピーク磁場は2.6T)を提供します。ATLASでは、ビーム衝突により発生した荷電粒子がその磁場により軌道を曲げ、その曲がり方、方向をそれぞれ検出することで、粒子が持つ運動量、荷電状況等を測定します。コイルの厚さを薄くすることで、外側の測定器に対する物質量の影響を最小限にするという技術的要求をクリアーしたもので、日本の全面的な貢献により完成されました


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Muon spectrometer

<Muon spectorometerの概要>

Muon spectrometerは、ATLASの一番外側に設置されており、内部の検出器をすべて透過するMuon(electronの200倍の重さ)の運動量を精密に測定する検出器です。
「Monitored drift-tube chambers」、「Cathode strip chambers」「Resistive plate chambers」「Thin gap chambers」及び「Barrel/End-Cap Toroids」により構成されています。

日本グループは、Thin gap chamber(TGC)の開発及び製作に参加しました。

<Thin gap chambers(TGC)>

TGCは、9層の飛跡検出器で構成されており、大きいものでは直径約25mにもなります。総面積は約約2,000平方m、TGC型ワイヤーチェンバーが3,588台設置されており、読み出し信号は約33万チャンネルにもなります。TGCは日本、イスラエル、中国の3カ国及びCERNとの共同作業により建設されました。
33万チャンネルの読み出し信号を処理する電子回路システムは、日本グループが設計から製作まで担当しました。
日本グループは、約4年間で3種類1,224台のチェンバーを製作し、これらのチェンバーは様々な検査をクリアーして、CERNに輸送され、CERNにおいて扇型に組み上げられました。
もっとも大きなBig wheelの場合、扇型の状態でATLASサイトまで移動し、そのまま地下100mの実験サイトに降下させ、地下で円形に組み上げられました。
TGCは、衝突によって生じたミューオンがATLASに設置されている超伝導トロイド電磁石によって曲げられるその飛跡を測定します。そして飛跡の曲がり具合によってエネルギーを計算し、高いエネルギーのミューオンの飛跡を選択し、トリガー信号(データ取得)を出すことになります。ミューオンが通過してからトリガー信号を発するまでに要する時間は、1回の衝突あたり25ナノ秒です。

 
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<Monitored Drift Tubes(MDT)>
MDTは、ガスが充満している半径3cmのチューブの列により構成されています。チューブの中には高電圧のワイヤーが張ってあり、粒子が通過した時にガスがイオン化された時間を測定することで、ミューオンの位置を決定します。MDTはATLASのエンドキャップ部分(Big wheel)及び円筒部分に3層に渡って設置されています。
<Cathode Strip Chambers(CSC)>
CSCは、drift tube chamberが高いバックグラウンドの環境の中では十分に機能しないことから、それを補うためにCSCが設置されています。CSCはワイヤーを密に配線し、ガスを充てんした細長い金属板で構成されています。ワイヤーと金属壁に強い電圧がかかっており、ミューオンが通過すると0.1mmの制度で位置測定をすることができます。

<Barrel and End-Cap Toroids>

衝突により生じたミューオンの軌道を高い磁場で曲げることで、ミューオンのエネルギー量を適切に測定できるようにするために、8基のBarrel Troide電磁石を放射状に、そして両サイドにEnd-Cap Troide電磁石を設置しています。Barrel Troide電磁石は総重量約830tで、3.9T(テスラ)の磁場を作り出します。End-Cap Troid電磁石は、総重量約240tで、4.1T(テスラ)の磁場を作り出します。

 
8基のBarrel Toroid電磁石と巨大なEnd-Cap Troid電磁石の移動の様子
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Calorimeters
Calorimeterは、電子、陽電子、フォトン、ハドロンといった荷電あるいは中性粒子のエネルギー量を測定します。
Solenoid電磁石の外側を覆うように設置されおり、Electromagnetic calorimeter、Tile calorimeter、Liquid-argon hadronic end -cap calorimeter、Liquid -argon forward calorimeter、から構成されています。
基本的には、金属のプレート鉛、銅、鉄)と検出プレートから構成されており、ビーム衝突により生じた粒子が金属プレートを通過する際に粒子シャワーに変化し、検出プレートがそのシャワーを測定する仕組みです。
<Electromagnetic calorimeter>
Electromagnetic calorimeterは、鉛のプレートと感知装置の層で構成されています。フォトンや電子が鉛のプレートを通過するときにelectron showerが発生します。electron showerで発生した電子、陽電子を銅プレートの間に挟まれている感知装置で測定します。これはcalorimeterにある液体アルゴンに通過した粒子の軌道に沿ってイオンが発生しそれを感知することで測定できます。

<Tile calorimeter>
Tile calorimeterは、鉄のプレートと薄さ3mmのシンチレータータイルにより構成され、Electromagnetic calorimeterを透過してきた粒子を測定します。

<Liquid-argon hadronic end -cap calorimeterr>
Liquid-argon hadronic end -cap calorimeter、は、銅とタングステンにより作られています。衝突点からビームラインに沿って5-25度の角度は強い放射線によりTile plateがダメージを受けてしまうことから、EMCと同じ仕組みで鉛を同に変えたcalorimeterを設置しています。

Intaraction
ビーム衝突では様々な粒子が発生しますが、ATLASではそれらをそれぞれ特定の検出器で補足します。逆にいえばそれぞれの粒子は特定の検出器とぶつからない限りは測定されません。またそれらは、粒子が特定の特徴を有するようにならない限り、または検出可能な粒子に崩壊しない限り測定されることはありません。


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電荷をもつ粒子、電子や陽子等は、Inner detectorでもelectromagnetic calorimeterでも検出できます。電荷をもたない粒子、中性子やフォトンはtracking chamberでは検出できません。これらの粒子は検出器と反応することでその痕跡を残します。フォトンは、electromagnetic calorimeterで検出され、中性子はhadron calorimeterに残したエネルギーによってその存在を検出されます。
それぞれの粒子は、それぞれに固有の特徴を持っています。たとえば、electromegunetic calorimeterのみで粒子が検出された場合、それは「フォトン」であると特定できるのです。