LHC
LHC(Large Hadron Collider)は周長27kmの陽子・陽子衝突型加速器です。LHC加速器はこれまでの加速器で最高エネルギー7TeVを実現します。1989年から11年間稼働したLEP加速器のトンネルをそのまま利用して、そこにLHC加速器を建設しました。加速器の総建設費は、約46億スイスフラン(約4,600億円)といわれています。
LHC加速器はCERN及び加盟国(member states)のみならず、日本、米国、ロシア、インド等non member statesからの協力により建設されました。
日本は財政的貢献とともに、LHC加速器のマグネットのうち超伝導四重極マグネット(衝突点近傍に設置され、衝突直前のビームを限りなく絞り込むレンズの役割をする)の開発・製作に大きく貢献しました。また日本の企業もこのLHC建設に参加しています(Gold awards for CERN's top suppliers, 2003)。
<LHC基本データ>
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周長 |
26.659km |
LEP加速器のトンネルを使用しています。 |
magnets数 |
9,593 |
dipoles, quadrupoles, sextupoles等のたくさんの種類のmagnetが設置されています。 |
main dilpoe数 |
1,232 |
- |
設計energy(陽子) |
7 TeV |
- |
1秒あたり |
リングを何周? |
1秒あたりLHCリングを11,245周します。 |
何回衝突? |
ビームは約3,000バンチ(粒子群の塊)で構成されており、1バンチあたり約1,000億の粒子が含まれています。これら粒子は非常に小さいことから、バンチ同士が1回交差して実際衝突するのは20回程度です。1秒間に平均3,000万回バンチが交差することから、約6億の衝突があると見込まれています。 |
ビーム寿命 |
10時間 |
LHCではビームが一度入射されると、10時間利用する予定です。これは100億km周回することを意味しており、地球から冥王星を往復できるほどの距離です。 |
<LHC加速器の主な構成>
Vacuum
LHCには3つの真空システムが稼働しています。そのうちbeam vacuumは、ビームが他のガス分子等と衝突することを防ぐために、高真空状態を維持しています。
Magnets
LHCには非常に多くの種類のMagnetが使われており(dipole, quadrupole, sextupoles, decapoles等)、総数で9,593になります。それぞれのMagnetは、ビームを最適の状態で周回させることに貢献しています。ほとんどのMagnetはmain
dipoleとquadrupoleの冷却装置の中に組み込まれています。
Insertion quadrulopes(挿入用四重極マグネット)はとても特別なmagnetで、高頻度で衝突が起こるようにビームを極限まで小さく絞り込む働きをします。このinsertion
quadrupole magnetの開発、製造にはKEKが非常に貢献しています。
Cavities
LHC cavitiesの主な役割は、衝突頻度が最大限になるよう衝突点でのluminosity(ルミノシティー)を高めるために、2,808の陽子のバンチ(かたまり)を強く束ねることです。またcavitiesは、ビームを最高エネルギーまで加速する際にRFパワーを加える役割もします。エネルギーロスが少なく大きなエネルギーを蓄積できる超伝導cavitiesは最適の装置と言えます。
LHC加速器は、ビームを入射してからPS、SPS加速器とビームを受け渡しながら徐々に陽子を加速します。
加速器 |
Energy |
Speed |
- |
水素から陽子をとりだす |
- |
Linac2 |
取り出した陽子を50MeVまで加速 |
光速の31.4% |
PS Booster |
50MeV ---> 1.4GeVまで加速 |
91.6% |
PS |
1.4GeV ---> 25GeV |
99.93% |
SPS |
25GeV ---> 450GeV |
99.9998% |
LHC |
450GeV ---> 7TeV |
99.9999991% |

Copyright (C) CERN
<MEMO>
GeVは"giga electron volt"、 TeVは"tera electron volt"の略です。
大きさを表す際に使われるgiga、teraといった数値は以下のとおりとなります。
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mega |
100万 |
mili |
1000分の1 |
giga |
10億 |
micro |
100万分の1 |
tera |
1兆 |
nano |
10億分の1 |
peta |
1000兆 |
pico |
1兆分の1 |
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1981 |
CERN理事会がLEP(Large Electron Postron) Collider計画を承認 |
1983 |
LEP建設開始 |
1989 |
LEP運転開始 |
1994.12 |
CERN理事会がLHC建設を条件付きで承認(条件;適切な予算範囲での建設、 non member statesからの貢献)
当初は予算的制限から2段階での建設計画であった |
1995.06 |
CERN理事会で日本政府がLHC建設への貢献を表明 |
1996. |
03月インドがLHCへの貢献
06月ロシアがLHCへの貢献を表明
12月カナダ、米国がLHCへの貢献を表明
CERN理事会でLHCの1段階での建設を承認 |
1997.12 |
米国がLHCへの参加・貢献に正式サイン |
2000.11 |
LEP運転終了 |
2002.11 |
LEP加速器装置の撤去完了 |
2005.03 |
Dipole Magnetを搬入開始 |
2006.11 |
全てのLHC用Magnetの製造が完了 |
2007.11 |
LHCの全Magnet接続完了 |
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<参考> LHC Milestones
* 本ページは、CERN web page「LHC the guide」の翻訳を中心に作成しました。
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