ATLAS はじめの一歩

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概 要

LHC実験とは

CERNで現在準備が進められているLHC実験とは、地下約100mのところに設置された円周約27kmの陽子陽子衝突型加速器(LHC; Large Hadron Collider)を用いて行う高エネルギー物理実験を言います。
LHC加速器では、陽子同士をそれぞれ反対の方向に7TeV(7兆電子ボルト)まで加速し、それを衝突させます。LHCに設置されているそれぞれの測定器では、衝突により発生した事象を精密に測定することで、物理学にある未解決の課題を解決することを目的としています。

LHC実験では、6つのプロジェクト(ATLAS, CMS, LHCb, ALICE, TOTEM, LHCf)が実施され、このうちATLAS実験、ALICE実験に日本の大学・研究機関が参加しています。

これ以外にも、日本はLHC加速器の、衝突点近傍に設置してビームを細く絞るレンズの役割をする超伝導四重極マグネット16台を設計・製作し、大きな貢献をしています。
また、日本の企業もLHC建設に貢献しています。(Gold awards for CERN's top suppliers, 2003)


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LHC実験の目的
LHC実験を行う目的は・・・

質量とは?--->Higgs goson(ヒッグス粒子)
そもそも質量の起源とは何か。どうして小さな粒子が質量を有していて、またいくつかの粒子は質量が0なのか。私達に身近な「質量」の根本的な仕組みは分かっていません。
その答えと予想されているのが、Higgs(ヒッグス)粒子の存在です。これは物理の標準理論(Standard model)にとって必要な未発見の粒子です。1964年に初めて仮説が発表されて以来いまだに発見されていません。
ATLAS及びCMS実験では、このとらえることの難しい粒子の兆候を追及します。

宇宙を満たしているもの?--->dark matter, dark energy(暗黒物質、暗黒エネルギー)
この宇宙で私たちが見ることができるもの、昆虫のアリから銀河まで、これらはすべて素粒子からできています。これらはすべて合わせても宇宙の質量の4%を構成しているにすぎません。それ以外の部分は、dark matter, dark energy (暗黒物質、暗黒エネルギー)と呼ばれるもので満たされていると考えられています。
しかし、このdark matter, dark energyを測定し研究することは大変困難です。dark matter, dark energyの性質を研究することは、現在の素粒子物理、宇宙論の分野においてもっとも大きな挑戦といえます。
ATLAS及びCMS実験では、dark matterの構成を解明する手がかりとして超対称性粒子を探求します。

反物質?--->なぜ「物質」の世界なのか
現在の宇宙は、私たちを構成する「物質」により成り立っています。
ビッグバン時には、この物質と全く同じ性質で逆の電荷をもった物質(反物質)が同量生成されたとされています。物質と反物質は衝突するとエネルギーとなって消滅します。しかし、ごくわずかの物質が残って、現在の宇宙を構成することになりました。
LHCb実験では、この物質と反物質の違いを研究します。これまでいくつかの実験ですでにわずかなふるまいの違いを測定していますが、物質と反物質の相違を明確に説明するのには十分ではありませんでした。

ビッグバン直後の状態は?--->クオーク・グルーオンプラズマ
宇宙を構成している物質は、素粒子の濃密で高温な素粒子のカクテルから発生したと考えられています。物質は、陽子と中性子からなる原子核を有する原子から構成されています。そして陽子や中性子は、クオークとそれをつなぎとめる役割をするグルーオンと呼ばれるもう一つの素粒子から構成されています。このつなぎとめる力は大変強力ですが、宇宙の最初期ではグルーオンがクオークをつなぎとめることができないほど高温かつ高エネルギーでした。つまりビッグバン直後の宇宙は超高温、高密度のクオークとグルーオンが混然とした状態(クオーク・グルーオンプラズマ)だったといえます。
ALICE実験では、LHCを使ってビッグバン直後に近い状態を作り出し、このクオーク・グルーオンプラズマの特性を研究します。

隠れた世界--->多次元世界
三次元世界は時間と結びついていることをアインシュタインは証明しました。その後の理論は隠れた世界の存在を提起しています。たとえば弦理論(string theory)は、まだ確認されていない余次元空間を予想しています。これらは、超高エネルギーになることで観測可能になるかもしれません。そこで、多次元の兆候を見つけるべく、すべての測定器で測定されたデータは慎重に解析されます。

<参考>CERN Web page "Why the LHC"

LHC実験測定器

  ALICE ATLAS CMS LHCb LHCf TOTEM
Size(long) 26m 46m 21m 21m 30cm 440m 
(high) 16m 25m 15m 10m 10cm 5m
(wide) 16m 25m 15m 13m 10cm 5m
Weight 10.000t 7,000t 12,500t 5,600t 40kg 20t
Design central barrel plus single arm forward muon spectrometer barrel plus end caps barrel plus caps forward spectrometer with planar detectors two detectors roman pot GEM detectors and cathods strip chamber
Material Cost 115MCHF 540MCHF 500MCHF 75MCHF - 6.5MCHF
Member 約1,500
(2007年5月現在以下同)
約1,900
(2007年4月現在以下同)
約2,000
(2007年5月現在以下同)
約650
(2007年5月現在以下同)
21
(2007年5月現在以下同)
約70
(2007年5月現在以下同)
Institutes 104 164 181 47 10 10
Countries 31 35 38 14 6 7
Location St.Genis Meyrin Cessy Ferney Meyrin Cessy

参考;CERN LHC the guide
 

沿  革
   
1994.12 CERN理事会がLHC計画を承認※加速器の2段階建設で承認
1996.02 ATLAS及びCMSの実験計画承認 
1996.12 CERN理事会がLHC加速器の1段階での建設を決定 
1998.04 ATLASサイト(Point1)の建設開始
1999.02 ATLAS toroid電磁石生産
2002.02 14か月かけて、LEP加速器装置の撤去完了
2003.06 ATAS地下サイト完成記念式典
2006.08 ATLAS Solenoid電磁石励磁試験成功(3.7tesla)
2007.09 最後のATLAS TGC ChamberをPoint1へ搬入
2007.11 LHC Magnets接続完了
2008.summer LHC加速器稼働予定

参照;LHC Milestones (CERN Web pageより)